京都とか奈良とかその辺の、日に参拝客が6人くらいしか来ない寂れた神社のご神体はムカデのお化け。もふもふどころか外骨格ゴツゴツの神様がキレかかっているので、ここらでいっちょ一肌脱いでやりますか!

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「鎮まり給えー鎮まり給えー」  眠たげな声がして、パサパサしたなにが顔にまとわりつく。 「やめろー! 不敬だろうが!」  男は声を荒らげ、顔の前で揺れるものを振り払った。  いつの間にか、目の前に女がいた。  ストライプのパジャマにカーディガンを引っかけただけのくつろぎスタイル。  表情はほとんど寝かかった寝ぼけ眼。  ガタガタに切ったコピー用紙を割り箸にはさんだものを手にしている。  小学生の工作レベルの御幣(ごへい)……に見えないこともない。  男の顔をパサパサしていたのは、これだ。 「深夜なんで静かにしてくださいって、駐車場の看板にも書いてあるでしょう。  いい加減にしてください」  女は寝起きそのものの不機嫌な声で言った。 「我を何と心得るか、この――」 「戦中のドサクサに暴れたところをサクッと祀られた新参の神。  ドのつくマイナーなせいでウィキペディアにも載っていないムカデのお化けでしょ」  はいはい、と女は雑にいなした。  しかし、それで引き下がるムカデのお化けではない。
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