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「鎮まり給えー鎮まり給えー」
眠たげな声がして、パサパサしたなにが顔にまとわりつく。
「やめろー! 不敬だろうが!」
男は声を荒らげ、顔の前で揺れるものを振り払った。
いつの間にか、目の前に女がいた。
ストライプのパジャマにカーディガンを引っかけただけのくつろぎスタイル。
表情はほとんど寝かかった寝ぼけ眼。
ガタガタに切ったコピー用紙を割り箸にはさんだものを手にしている。
小学生の工作レベルの御幣……に見えないこともない。
男の顔をパサパサしていたのは、これだ。
「深夜なんで静かにしてくださいって、駐車場の看板にも書いてあるでしょう。
いい加減にしてください」
女は寝起きそのものの不機嫌な声で言った。
「我を何と心得るか、この――」
「戦中のドサクサに暴れたところをサクッと祀られた新参の神。
ドのつくマイナーなせいでウィキペディアにも載っていないムカデのお化けでしょ」
はいはい、と女は雑にいなした。
しかし、それで引き下がるムカデのお化けではない。
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