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「承知いたしました。
私は弊社の、祈願アドバイザーです。
願い事を最も効率よく神に届けるお手伝いをさせていただいております」
女は伊達メガネをキリッと持ち上げ、気取った声を出す。
青年がのろのろと顔を上げ、力尽きたように椅子に座った。
「まずは、どのような祈願がご希望ですか?」
「就職です。
前職をクビになって半年経ったのに、まだ次の仕事が決まらなくて……」
おもむろに取り出した手帳に、女はメモを取っていく。
「もう数え切れないほど書類を送っているんですが、まず書類選考で弾かれる。
高卒以上ってあっても、結局は大卒じゃないとダメなんでしょうか」
「何かスキル等お持ちではありませんか?」
「いいえ。
運転免許さえ持っていないありさまです」
「前職と希望職は、関連がありますか?」
「前職はwebコンテンツを作っていました。
できれば経験を活かせる同業がいいと思っていたのですが、あまりにも選考が通らないので、もう何でもいいかなと……」
世間にうといムカデのお化けも、後ろで聞きながら、これは何だかおかしいと思い始める。
実際のところ、転職サイト登録時に行われるヒアリングに近い。
この女、青年の転職を世話しようというのか。
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