京都とか奈良とかその辺の、日に参拝客が6人くらいしか来ない寂れた神社のご神体はムカデのお化け。もふもふどころか外骨格ゴツゴツの神様がキレかかっているので、ここらでいっちょ一肌脱いでやりますか!

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「祈願という行為をシステマチックにして、より効率的かつピンポイントに作用するよう改良されたのですね」 「そういうことです。  まず、お名前とご住所から順番にご記入ください」  最近の絵馬は、名前や住所を記入しても第三者の目に触れないよう、プライバシー保護シールを貼るという神社も増えてきている。  しかし、ムカデのお化けに言わせると、それだけでは全然たりないというのだ。  どこの誰かも知らないやつの願いを叶えてやる筋合いがどこにある。  最低限、どこの誰と名乗るのが礼儀というものだ。 「この、氏神名というのは、どう書けばいいのでしょう?」 「当社の氏子の方でしたら空欄で構いません。  遠方の方の場合は氏神様のお名前をご記入いただくと、確認項目が1つ減るので、祈願成就までの期間が短縮されます」  青年は「なるほど」と頷き、氏神名を記入した。  今日は面接帰りにふらりと訪れたらしい。  それから祈願項目の欄の上でボールペンをさまよわせた。  役所の書類にありがちな明治大正昭和平成にマルをつける、あの要領で「家内安全」「無病息災」「交通安全」「合格祈願」……などなど、およそ10の項目があるのだが……。
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