京都とか奈良とかその辺の、日に参拝客が6人くらいしか来ない寂れた神社のご神体はムカデのお化け。もふもふどころか外骨格ゴツゴツの神様がキレかかっているので、ここらでいっちょ一肌脱いでやりますか!

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「すみません、ここなんですが、就職祈願の場合はどれにマルすればいいでしょう?」 「あー……確かにないですね。  じゃあとりあえず、商売繁盛にマルしていただいて――」  女が言った、そのとたん。  背後で不穏な空気がとぐろを巻いたのを感じた。  嫌な予感とかそういうレベルではなく、イヤしかない気配に振り向くとそこには。  黒々とした鎧が連なったかのような体に、いやらしく赤い足を無数にうごめかせる巨大なムカデが、鎌のような大顎(おおあご)をガチガチ鳴らしていた。  女はわざとらしい咳払いをしてから振り返り、腹話術の要領でまくしたてる。 「見えないからって本性現すのやめてください。  本殿の周りハーブ園にしますよ」  すると巨大ムカデ、絵に描いたような「スンッ」ぷりで人間の姿に戻った。  どうやらそこらのムカデと大差ないらしい。 「――あの、それからどうすれば……?」 「あら失礼いたしました、変な虫がいたもので。  ええと、就職祈願ですよね。  まずは内定がほしい企業名を、こちらに3つまでご記入ください」  アドバイザー風の女にもっともらしいことを言われ、男は明らかに(ひる)んだ表情になる。 「もっと大雑把じゃダメなんでしょうか?  IT系とか、広告業とか……」
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