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 寺門をまいても、椎名はりんごの手を握ったままだった。  りんごも振り払おうとせず、黙って彼の後をついていった。  ふいに、椎名はりんごを振り返り、言った。 「ごめん、青木さん。さっき君が教室でしてた話、廊下で聴いてた」 「えっ……」  りんごは足を止め、青ざめる。  先程まで火照っていた顔が、一気に冷めた。 (聴かれてた……? あの話を?)  同時に、絶望した。  せっかく椎名への気持ちを再確認できらのに、嫌われてしまうと思った。 (もうダメだ。こんな重い女、受け入れてくれるわけない。やっぱり、私は幸せになんてなれないんだ……)  様々な想いと後悔が混ざり合い、涙があふれ出る。  すると椎名はりんごのもう一方の手も合わせて握り、微笑んで言った。 「俺、絶対に君のことを幸せにするから。過去のことなんか忘れて、俺とずっと一緒にいてよ」 「……いいの?」 「うん」 「本当に?」 「もちろん」  その途端、りんごの視界が明るく開けた気がした。  今まで悩んでいたこと、心配していたこと、恐れていたこと……全てが「大丈夫だ」と確信できた。 「だから……俺と付き合って下さい」  りんごは嬉しさと恥ずかしさで顔を赤らめ、頷いた。 「……はい。よろしくお願いします」 (完)
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