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店員さんを呼んで注文を済ませると、しばらくして広瀬さんが口を開いた。
「クリスマス、一緒に過ごせなくてごめん」
「お店、忙しそうですもんね。俺は大丈夫ですから、気にしないでください」
そして少し躊躇ってから、俺は続けた。
「クリスマスより、俺は今日、広瀬さんと一緒にいられることのほうが嬉しいです。みんなにとっては特別な日じゃないかもしれないけど、俺にとっては本当に大切な日だから」
広瀬さんは瞬きを一つし、恐らく真っ赤になっているだろう俺に微笑んだ。
「……俺にとっても、特別な日じゃなかった」
「……え?」
「今までは」
ただ優しいだけじゃない、何とも言えない眼差しに、俺は言葉を失った。切なくて、愛おしくて、胸が締め付けられそうになる。
そんな俺を見て、広瀬さんは小さく笑った。
「君に逢えてよかった。今日が俺にとっても特別な日になったのは、君のおかげだ。ありがとう」
自分の誕生日のことを、そんな風に言わないでほしい。大好きなはずの広瀬さんの微笑みが、見ているだけで哀しい。
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