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だけど、と俺は思った。本当に広瀬さんが俺のことをそう想ってくれているのなら。俺はこれから先もずっと、広瀬さんが自分の生まれた日のことを特別に思えるような存在でいたいと、強く願った。
*
食事をし、それぞれお会計を済ませると、俺たちは本来の目的地である公園に向かった。すっかり日も落ち、空気も冴えて、桜並木に飾り付けられた灯りが遠くまで煌めいているのがよく見える。
俺は思わず両手を軽く擦り合わせた。手袋を持ってこようと思いながら、また忘れてしまった。まだ息が白くなるほどではないが、夜はやはり昼間より格段に冷える。
とその時、広瀬さんが身に着けたばかりの手袋を片方外し、俺に渡した。
「え、あの……」
「寒いから、半分こ」
「いや、でも……っ」
手袋を持ってこなかったのは俺のミスだし、と遠慮する暇もなく、広瀬さんが無表情に首を傾げた。
「俺がつける?」
「……いえ、自分でつけます……」
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