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知ってる。広瀬さんてあざといときもあるけど、これは天然のほうだ。妙に合理的なところがあるせいか、時々、俺が遠慮したり恥ずかしがったりする理由がわからないと、こういう少しずれた会話になる。そこもまあ、決して嫌いではないのだけれど!
とはいえ、恋人のものを身に着けるのはちょっと嬉しい。それに広瀬さんの体温がまだ残っている。広瀬さんの片手に寒い思いをさせてしまう罪悪感はあれど、つい顔が綻んでしまう。
「広瀬さん、ありがとうございます」
が、広瀬さんは寒い思いをするつもりはなかったらしい。手袋をしていないほうの手で、やはり手袋をしていない俺の手を握ると、自分のコートのポケットに入れた。瞬間、俺は顔から火が出るとはこういうことを言うのだな、と実感した。
「────────っ!!!」
知ってる! これ、ドラマで見たことあるヤツだ! うわあああああっ!
動揺しすぎて声も言葉も出てこない。思考力すらなくし、かなり時間が経ったと思われるころ、俺はようやく自分が公園の入り口まで来ていたことに気づいた。
「ここ?」
「はい……」
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