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自分でも驚くほど記憶がない。だがまあ、無事に案内できていたのなら、取り敢えずいいことにしよう。もっとも、広瀬さんに連れてきてもらったという可能性もなくはないが、気にしないことにする。
公園の中は家族連れや男女のカップルが数多く歩いていた。イルミネーションがたくさん展示されているエリアは、立ち止まって写真を撮ったりしている人も多く、かなり混雑している。もともと広瀬さんのリクエストで見に来たとはいえ、人混みの中にいて大丈夫か心配になる。電車での二の舞だけは絶対にしたくない。
イルミネーションの灯りがあるとはいえ、暗いことに変わりはないので、俺はつい広瀬さんの表情に変化がないか、ちらちらと確かめていた。と不意に、未だ広瀬さんのコートのポケットの中にある俺の手から、広瀬さんの手が離れるのを感じた。
「あ……」
思ってた以上の寂しさと、よくわからない感情が渦巻いて混乱しかけたとき、広瀬さんの手が再び、けれど少し違う形で握りなおされた。俺の指の間に、広瀬さんの指がするりと入り込み、しっかりと重なり合う。
「ふあっ!?」
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