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知っている。でも言葉にし、ただの惚気にすることで、俺は少しだけ安心したかったのかもしれない。俺も、広瀬さんが嫌いな人間であることに変わりはないし、そもそも広瀬さんが俺のことを好きでいてくれる理由も、本当のところよくわかっていないのだから。
俺は広瀬さんと絡まり合う手に軽く力を込め、ちらりと見上げた。
「絶対、ですよ」
瞬間、広瀬さんの頬が淡く染まったのがイルミネーションの灯りで浮かび上がった。手袋をしているほうの手で、広瀬さんがさっと顔を隠す。
「……九条くん、あざとい」
理不尽! というか、これこそ天然だし! 養殖じゃないし! そもそもこんな不器用で地味顔の俺にあざとさを見出せること自体、広瀬さんの感性はどこかおかしい! というか、俺より遥かに天然であざとい広瀬さんに言われたくないんですけど!
とまあ、いろいろなことが頭をよぎったけれど、今日のところは誕生日だから許してあげることにした。むしろ、あざといと勘違いまでしてくれるなら好都合だ。
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