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俺は瞬時に周囲の様子を確認した。この辺りはイルミネーションがまばらに配置されているせいか、人通りも少ない。この誕生日デート最大のミッションを実行するなら、今しかない!
俺は満を持して、例の魔法の言葉を使うことにした。咳払いをし、勇気を出して口にする。
「あ、の! 俺の我儘、聞いてくれませんか……?」
不安のあまり、語尾が尻すぼみになってしまったが、羞恥に顔を伏せた俺にも、広瀬さんの少し驚いた視線は痛いほど感じた。そうだよね。広瀬さんがあざといとか言って赤くなるから、俺も何故か急に気が大きくなって口にしてしまったけれど、俺の誕生日ならともかく、広瀬さんの誕生日に我儘を聞いてほしいと言うなんて、どうかしていた。保険どころか誤爆だよ! 中井を信じた俺が馬鹿だった。変な前置きなんかしなきゃよかった!
「すみません! 今のはちょっとした冗談、というか……」
何とか言い訳をしようと顔を上げた俺は、思ったより近くに広瀬さんの顔があることに気づき、言葉を見失った。
「……あの……」
「九条くんの我儘、聞かせて?」
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