猫の王様 ~EP.2 九条くんと誕生日の話~

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 最近、友人の眼差しが冷たい。  時に涼やかというか、時に凍りつきそうというか。  まるで俺を嫌っているようにも見えるが、そんなことはない。  反対に面倒見が良すぎて、もはや俺の保護者のようだ。これは絶対に秘密だが、俺は時々、心の中で中井のことをお父さんと呼んでいる。  実際、中井が冷ややかな目を向けているのは俺ではなく、俺の話だ。それと、俺の浮かれた態度。  自分でも、さすがに少しは自重しないといけないのはわかっている。わかってはいるけれど、どうにもならない。きっと、半分くらい体が浮いている。それくらい足元がふわふわしている自覚はある。  生まれて初めて恋人ができて、まだ一ヶ月も経っていないのだから、少しは大目に見てほしい。とはいえ、すでにいろいろと心配やら迷惑やらかけているから、あの氷のような眼差しも理解はできる。むしろ俺が広瀬さんとうまくいったのは中井のおかげだから、本当に感謝しかない。
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