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「で、でも……」
ここを降りたら、たぶんもうボクは引き返せない。
今までの自分とサヨナラしなきゃならなくなる……きっと。
『勇気を出すぴょ、ミンク。オイラたちがついてる。……ずっと』
ラピがボクの腕からすり抜けて、ぴょんと石段の先に降り立った。
「……いいから来い。行かなきゃ何も始まらないし、何も終われない。この世は終わりと始まりで成り立っている」
ジェダさんがボクに手を差し伸べる。
「ジェダの言う通りだ。降りて行こうミンク。あの下の中央に、君は立たなければならない」
そしてネフラさまの手もこちらへ。
「……はい」
左手をジェダさんに、右手をネフラさまに預けて、ボクは螺旋の石段を降りていった。
見下ろしたすり鉢の底は石畳。
その中央に、スポットライトのような円形の星明りが降り注いでいる。魔法陣にも似た光のサークルの真上を見上げると、大きな噴火口がぽっかりと開いていた。
夜空、降臨。
(なんて綺麗な……祭壇みたいだ)
静謐の美しさ、その中に確かな力強さがある。
ここまで来たらもう迷いなんかない。
「ありがとうジェダさん、ネフラさま。ここからは、……ひとりで行ける」
ボクは二人から手を離して、中央のサークルに向かった。
周囲の岩壁からは、たくさんの瑠璃が顔を覗かせている。
震えるように、囁くように、星を集めて光り輝く。
(……胸が、熱い……)
ボクは夜空が降りる光円の中に、ゆっくりと足を踏み入れた。
その瞬間。
「……っ……!」
星明りが回る。
いや、上から注ぐ光と周囲の瑠璃の光が溶け合い、混ざり合い、僕を取り巻いて螺旋を描く。
──ミンク……!
(え……?)
ボクを呼んだのはジェダさん? ネフラさま? ラピ? それとも……。
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