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──夜までには洞窟を抜けたいとネフラさまは言ってたけど。
「おかしいな。ここは二股に分かれていて、左のはずだったが……分かれ道が三つあるぞ」
どうやら迷ったらしい。
今が昼なのか夜なのか、ずっと暗い洞窟の中で外の様子がわからないからそれも定かではない。
「仕方ねえな。端から行ってみて、行き止まりなら戻ってくりゃいい」
「そうするか」
歩き出すジェダさんとネフラさまを、静かな声が呼び止めた。
「お二人ともお待ちください。ミンクくんの様子が」
フルウさんに覗き込まれて、ボクの足も止まる。
「ごめんなさい……なんだか気分が……」
だいぶ前から胃がムカムカするような気がしていた。今は立っているのもちょっと辛い。
「大丈夫かい、ミンク? そうか、薬草の摂りすぎかもしれない。急激な魔力の増減に身体がついてこれないんだ」
「ええ、おそらく。それにここまでろくな休憩もなく来ましたから。少しミンクくんを休ませてあげた方が」
すると、ジェダさんがツカツカと近づいて来ていきなりボクを肩に担ぎ上げた。
「……わっ……?」
そして辺りを見回し、少し離れた岩場の陰に足を向ける。
「ジェ、ジェダさん……?」
「なんでそういう事をお前は黙ってるんだ。俺に ”察しろ” とでも言うつもりか」
だって、あまりにも楽しそうで活き活きしていて。水を差すような事はとても言えなかった。
ボクのせいでろくな魔法も使えず、ずっともどかしい思いをさせていたから。
「ごめんなさい……」
そこは大きな岩に囲まれ、中央には横になれそうな少し平たい岩もある。ジェダさんはそこにボクを降ろし、岩壁に寄りかからせた。
「ここで少し休んでろ。俺とネフラは道を探してくる」
「……はい」
コクンと小さく肯くと、ふいに緑の瞳が近づいて来て。
「よく頑張った」
ぷちゅと触れあって、離れていった唇。しかもとびきり優しい笑顔付きで。
「…………」
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