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フルウさんの手はいつも少しだけひやりとする。でもゾッとする冷たさではなく、どこか爽やかなひんやり。
「ふふ、それにしてもあのジェダ様が……。君は本気で愛されているようだね」
彼の掌が触れるお腹から、重苦しいつかえがサラサラと流れていくのがわかる。……整っていく。
「そ、そんな。ボクの好きが大きすぎて、いつも好き好きってうるさいから……ほんのちょっと、十分の一くらい応えてくれるようになっただけ」
それは事実。本人も ”ちょっとだけ” って言ってるし。
「巨大な愛の十分の一なら、かなり大きいのでは?」
「あ……そっか。そう考えると……」
また顔が『嬉しい』って勝手に喋ってしまう。我ながら単純。
「一つ良いことを教えてあげる。ミンクくんの為に、ジェダ様はわたしたち館の者との戯れを取りやめる事にしましたよ」
「え……、え!? やっぱりアモネさんの話は本当だったんだ!」
「アモネ? 彼がもう君に?」
パシッと口を押えたけれど、もう遅い。
「そんなはずは。これは昨日、ジェダ様が館にお帰りになってからの話だよ。その後アモネは館から出ていないはず」
困った。でもフルウさんなら秘密と言えば守ってくれそう……。
「あの、ジェダさんには言わないでね。実は昨夜、宿に入ったらアモネさんが訪ねてきたんだ。その時に教えてくれて」
襲われそうになったとまでは言えないけど。でも今思えば、からかわれただけかもしれない。
「……変ですね。館に戻ってすぐにポルトくんの具合が悪いと伝えたら、部屋に飛び込んで行ったのに。それを置いてミンクくんの宿へ……?」
「ポルトくん? ……あ! それがアモネさんが看病してる弟くんなんだね。なにか重い病気なの……?」
思案顔で宙を見つめていたフルウさんが、またボクに視線を合わせる。
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