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「病……というか。最近部屋に籠りがちで、アモネもわたしも心配していたんだが」
アモネさんの弟くん。
ボクは会っていないけど、ラピをずいぶん気に入って放してくれなかったらしい。ボクよりいくつか年下くらいの、可愛らしい男の子だったとか。
「昨日、部屋を訪ねたら数日の間にすっかり痩せて、ぼんやりと虚ろな目をして。でも体内の流れは正常なんだ……何が原因かわからない」
「身体はなんともないのに……? まるで重症の恋わずらいみたいだね」
「まさか。ポルト君はまだろくに館から出た事も」
突然フルウさんが蒼い目をハッと見開いた。
「ジェダ様……と言った」
「え?」
「……ポルト君が。昨夜うわ言のように」
「……っ!」
まさか、なんてとても言えない。だってジェダさんは魅力的だから。
ましてやその子にとってはお世話になってる館の主、一緒に暮らしてるうちに憧れから恋に変わっても何もおかしくない。
「い、いや。きっと心でアモネを探して、一緒にいるはずのジェダ様の名が出たんだろう。そもそもジェダ様はあんな子供を相手には……」
急にフルウさんが言葉を切った。息をひそめ、目だけが油断なく周囲を見回す。
「フルウさん?」
「しっ……何かが動いた。ミンクくんはここでじっとしていて」
そう言い渡し、彼は音をたてずに岩場からそっと出て行った。耳を澄ませても、炎の蝙蝠たちが周囲を飛び交う音で何も聞こえない。
「もう。君たち、ちょっと落ち着いてよ。パタパタ邪魔なの!」
ボクが叱るとコウモリたちは一斉にビクッと飛び上がり、せり出した岩に次々とぶら下がっておとなしくなってしまった。
「あれ? 意外と素直」
まるで天井からぶら下がってるランプのようでとても便利。
「ありがと、みんな」
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