【エリア6:ノヴァ山】Scene:13. 夜空の洞窟

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「フ、ルウ……さん。待っ……」  心と身体がゆっくりと剥がされてゆき、置き去りにされるのは……心の方。 「そのまま、わたくしを胸に刻みなさい。あなたには……おそらく価値がある」 (価値……ボクに……?)  襟首を引き寄せられて、近づいてくるフルウさんの唇。これを受け入れれば、ボクはきっと楽になれる──。  ……ポキャ。 「……え」  気がついたらボクは、彼の頬にゆるい拳を押し付けていた。  戸惑ったような蒼い瞳が目の前で瞬く。 「……ああっ! ご、ごめんなさいフルウさん!」 「…………」  ボクは彼から飛び退いて、後ろの岩壁にビタッと張り付いた。 「……動けるとは」 「え? そ、そりゃ動けますけど。でも」  なんてことをしちゃったんだろう。いくらなんでもグーで殴るなんて。   「なぜですか、ミンクくん」 「なぜ……って?」 「わたくしを拒む理由です」  心底不可解な顔をしてフルウさんがボクを見据える。でもきっとボクは、同じくらい不可解な顔をしていると思う。 「だっ……て、フルウさんはジェダさんじゃないから」 「……!」  理由なんてそれ以外にない。そりゃこんな綺麗な人に迫られたら、少しはふわっとしちゃうけど。 「フルウさんはボクを慰めようとしてくれたんですよね。でも大丈夫です」  心を置き去りにして身体だけ慰めてもらっても虚しいだけ。 「そんなのに甘えたら、きっとボクは哀しくなるから」 「哀しく……?」 「それにボク、可哀想じゃないよ」  思い浮かぶのは、”ミンクを弄ぶ気なんてない” と訴えて、怒りに震えたジェダさんの肩。あの時ボクは、二度と誰かの言葉に惑わされたりしないと心に誓った。 (彼の何を信じるとか信じないとか……そういうことじゃなくて)  ボクにとっては、ジェダさんそのものがこの世の真実。
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