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果たして岩場から顔を覗かせたのは当のジェダさんだった。
「道が見つかったぞ。身体はどうだ、行けそうか?」
「う、うん、フルウさんが整えてくれたから。もう大丈夫」
平静を装って答えるボクに、彼がホッと息をつく。
「そうか。ご苦労だったフルウ」
「とんでもございません、これしきのこと」
「出口は近いらしい。ネフラが向こうで待ってる」
踵を返す後ろ姿をそっと見送って、ボクはフルウさんを振り返った。
「この任務が終わったらジェダさんにも話しましょう。ポルトくんを放ってはおけない」
「わたくしもそのつもりでしたよ。ですがまず」
彼がついと顔を上げてどこかを見やる。
「……こちらを確かめなければ」
(え?)
こちら?
確かめるって、まだジェダさんを疑ってる……のかな。
「ミンク何してる、早く来い。クソウサギがなんか騒いでるぞ」
「は、はーい! ラピ? 今度はなんだろ、もう……」
慌てて岩場を出ると、背後でフルウさんがまたポツリと呟いた。
「やはりジェダイトでなければダメか……」
「え? なんですか?」
「いいえ。例の者がジェダ様でなくて良かった、と。さあ参りましょう」
さらりと蒼い髪を流して、フルウさんが先に立って歩き出す。その背中を見つめながら、ボクはまだ見ぬポルトくんを思った。
(いったい誰が何のためにそんな酷い真似を……)
ポルトくんを秘かに気に入って、想いを遂げる為とか。だとしたらジェダさんを装う必要がある?
それにあの館に忍び込んで、これまで誰にも気づかれないなんて。
(気配を消せる……? それってかなりレベルの高い魔法だ)
どちらにしても悪意しか感じられない。
『ああーん、ミンクぅーー! おヒゲがチリチリって燃えたぴょーー!』
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