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分かれ道の所でぴょんと飛びついてきたラピを抱きとめた。見ると確かに片方のヒゲの先がチリリと丸まっている。
「わあぁ……ホントだ。でもラピだってフルウさんのシールドで守られてるのに」
『先っぽだけシールドからはみ出てたぴょ……。そこにコウモリがじゃれてきて』
ボクの腕の中でくすんくすんとラピが泣く。どうやら炎の蝙蝠たちに気に入られたらしい。
「グズってんじゃねぇ。ミンクに甘えんな」
「ふぅむ……いつの間にかすっかりペットの地位を確立して。あざといな」
『こりゃ! ジェダとネフラはオイラに厳しすぎるぴょ!』
いざこざしている二人と一匹に秘かにため息を吐くと、隅に控えているフルウさんが視界に入った。
彼はひとり静かに分かれ道の先を見つめている。
そしてボクは、なぜか真ん中の通路が……すごく気になる。
「……ネフラさま。先に続く道はどれだったんですか」
「ああ。こっちだ、中央の道以外は行き止まりだった」
(やっぱり……)
ネフラさまの白いローブを追い越して、ボクは逸る気持ちのまま分かれ道の真ん中に立った。
暗い通路。その奥は漆黒の闇に支配されて、来るものを拒んでいるように見える。
(……でも違う。ボクは……)
拒まれていない。
「ミンク? こら待て、一人で行くな!」
「ジェダ。……大丈夫、ここまで来たらもうミンクの好きにさせてやっていい」
ラピを抱いたまま通路に足を踏み入れると、コウモリたちが我先にと道筋を照らしてくれる。
まるで、導いてくれるかのように。
(……ああ、そうか)
きっと最初から、ボクに危害を加えるつもりなんかない。離れなかったのはじゃれてきただけなんだ。
(キミたちは、ボクの眷属。仲間だったんだね……)
その時、フルウさんが施してくれたシールドが薄れ、代わりに薄青に発光する精霊波がボクを取り巻いた。
「ミンク……?」
「しっ……、始まったな。これまで私が翡翠で封印し、隠し通してきた精霊波だ」
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