【エリア6:ノヴァ山】Scene:13. 夜空の洞窟

20/22
136人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
 分かれ道の所でぴょんと飛びついてきたラピを抱きとめた。見ると確かに片方のヒゲの先がチリリと丸まっている。 「わあぁ……ホントだ。でもラピだってフルウさんのシールドで守られてるのに」 『先っぽだけシールドからはみ出てたぴょ……。そこにコウモリがじゃれてきて』  ボクの腕の中でくすんくすんとラピが泣く。どうやら炎の蝙蝠たちに気に入られたらしい。 「グズってんじゃねぇ。ミンクに甘えんな」 「ふぅむ……いつの間にかすっかりペットの地位を確立して。あざといな」 『こりゃ! ジェダとネフラはオイラに厳しすぎるぴょ!』  いざこざしている二人と一匹に秘かにため息を吐くと、(すみ)に控えているフルウさんが視界に入った。  彼はひとり静かに分かれ道の先を見つめている。  そしてボクは、なぜか真ん中の通路が……すごく気になる。 「……ネフラさま。先に続く道はどれだったんですか」 「ああ。こっちだ、中央の道以外は行き止まりだった」 (やっぱり……)  ネフラさまの白いローブを追い越して、ボクは逸る気持ちのまま分かれ道の真ん中に立った。  暗い通路。その奥は漆黒の闇に支配されて、来るものを拒んでいるように見える。 (……でも違う。ボクは……)  拒まれていない。 「ミンク? こら待て、一人で行くな!」 「ジェダ。……大丈夫、ここまで来たらもうミンクの好きにさせてやっていい」  ラピを抱いたまま通路に足を踏み入れると、コウモリたちが我先にと道筋を照らしてくれる。  まるで、導いてくれるかのように。 (……ああ、そうか)  きっと最初から、ボクに危害を加えるつもりなんかない。離れなかったのはじゃれてきただけなんだ。 (キミたちは、ボクの眷属(けんぞく)。仲間だったんだね……)  その時、フルウさんが施してくれたシールドが薄れ、代わりに薄青に発光する精霊波(フィオラ)がボクを取り巻いた。 「ミンク……?」 「しっ……、始まったな。これまで私が翡翠(ネフライト)で封印し、隠し通してきた精霊波(フィオラ)だ」
/273ページ

最初のコメントを投稿しよう!