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後を付いてくるネフラさまの声が耳を掠める。
幼い頃からずっと左の髪を束ねていた翡翠の護り石。あれはこのフィオラを隠す為のものだった……?
ボクを包む精霊波に、コウモリたちがキッキッとはしゃいで鳴く。
その音が、”おかえり” と聞こえる……。
『ぴょ……? ミンクぅ、奥でなんか光ってる』
「うん……」
腕の中のラピが前足を上げて示した先に、薄ぼんやりと光る大きな穴が見えた。
『出口……ぴょ?』
「……ううん。ちょっと違う」
自然と早まる足、惹き寄せられる心。
これまでの生活だって何も不自由はなかった、充分幸せに生きてこられた。でも。
(違うんだ……ボクは、ボクは……!)
ほとんど小走りになったボクの後を、ジェダさんやネフラさまたちの足音もちゃんとついてきてくれてる。
やがて辿り着いた大穴から広がる光景は。
(……あぁ……!)
「……っ! 大空洞……?」
ボクの隣で、ジェダさんが唸るように呟いた。
すり鉢状に深く、円形に広がった大きな空洞。光って見えるのは、大小さまざまな噴火口からいくつもの星明りが挿し込んでいるから。
その明りを受けて、岩壁に点々と露出した石が青く輝いている。
「……ねえネフラさま、この石って」
「瑠璃だよ。このノヴァ山は瑠璃の鉱山なんだ」
「ラピ……ス、ラズリ……」
『キレイな石だぴょ。ミンクの目の色とおんなじ』
紫がかった深い青に、ところどころ金銀の斑点模様が見て取れる不思議な石。
それはまるで、星々が瞬く明るい夜空。
「……おいミンク。なんで泣く」
「え……」
ジェダさんに言われて気がついた。知らないうちに涙がひとつ、頬を伝って零れていく。
「ばーか。自分を見つけた時はな、笑うもんだ」
「自分を……」
「来いよ。下へ行ってみよう」
岩壁沿いを半螺旋状に石階段が施され、すり鉢の底へ降りられるようになっている。
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