136人が本棚に入れています
本棚に追加
/273ページ
Scene:14. 瑠璃の里、星の記憶
──せめてひとつ、キミだけは。
まだ生まれて間もないキミ。誰よりもこの地の石と星に愛されて生じたキミは、我らの最後の希望。
己の力と、誇りと、道を信じて……生きよ。
きっとキミは、運命にすら愛される──。
(ああ……そうだった。ボクは……)
ここで、この瑠璃から生まれた。
星に愛され、蘇生魔法を駆使する、この世で唯一無二の魔精霊。優しく高潔な、ルクセラの里の民。
(……っ……!?)
ボクの心が、真上の噴火口を突き抜けて夜空に放り出される。
見えたのは瑠璃色の光と紫黒の闇。それぞれの中に強大な力を放つ魔精霊が佇む。
(これは……星の記憶?)
『我が欲するのは……、……蘇生の魔法。……召喚契約の魔法陣を……』
黒い魔精霊の渇望が静かに膨らんでいく。そして、求められた召喚契約を全霊で拒否する瑠璃の魔精霊……ルクセラの里の長。
『ならば皆殺し……』
『……なめるな! 夢魔!!』
(夢魔……?)
巨大な青と黒の魔法が激しくぶつかり合い、やがて黒い波動がその一帯を舐めるように広がっていった。
一瞬にして聞こえなくなった、多くの命の声。
(里ごと、全滅させられたんだ……!)
黒い夢魔の心の声が聞こえる。
”蘇生の魔法があれば、我は永遠。自由に、欲するがまま、この世の欲望を貪り食らい、何者も恐るるに足らず。
だが、その永久の術が手に入らぬのなら……”
(他の誰かの手に渡る前に根こそぎ潰そう……? なんて酷い……)
夢魔が自分の頭部を覆っていたフードを外した。現れたのは凍り付くほどに美しい相貌の男。
(この人がボクの仲間を。でも夢魔って……?)
美貌の黒い魔精霊が、ボクの視界から螺旋を描いて掻き消える。
次に見えたのは、同じ美しい魔精霊でも纏っているのは白いローブ。
(あ……!)
長めのプラチナの髪を無造作に束ね、精悍な面差しに柔らかな微笑みを浮かべた魔精霊が、岩場に隠れた小さな男の子に近づいていく。
『おチビさん。……名前は? 自分で言えるかな?』
『……ミンク』
『そうか。……おいでミンク、私と行こう。ここは危険だ……』
最初のコメントを投稿しよう!