Scene:14. 瑠璃の里、星の記憶

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Scene:14. 瑠璃の里、星の記憶

   ──せめてひとつ、キミだけは。  まだ生まれて間もないキミ。誰よりもこの地の(ラピス)(ステラ)に愛されて生じたキミは、我らの最後の希望。  己の力と、誇りと、道を信じて……生きよ。  きっとキミは、運命にすら愛される──。 (ああ……そうだった。ボクは……)  ここで、この瑠璃(ラピスラズリ)から生まれた。  星に愛され、蘇生(レクティ)魔法(マギア)を駆使する、この世で唯一無二の魔精霊(マギフェラス)。優しく高潔な、ルクセラの里の民。 (……っ……!?)  ボクの心が、真上の噴火口を突き抜けて夜空に放り出される。  見えたのは瑠璃色の光と紫黒(しこく)の闇。それぞれの中に強大な力を放つ魔精霊(マギフェラス)が佇む。 (これは……星の記憶?) 『(われ)が欲するのは……、……蘇生の魔法(マギア)。……召喚契約の魔法陣(マギアグラム)を……』  黒い魔精霊(マギフェラス)の渇望が静かに膨らんでいく。そして、求められた召喚契約を全霊で拒否する瑠璃の魔精霊(マギフェラス)……ルクセラの里の(おさ)。 『ならば皆殺し……』 『……なめるな! 夢魔(インキュブス)!!』 (夢魔(インキュブス)……?)  巨大な青と黒の魔法が激しくぶつかり合い、やがて黒い波動がその一帯を舐めるように広がっていった。  一瞬にして聞こえなくなった、多くの命の声。 (里ごと、全滅させられたんだ……!)  黒い夢魔(インキュブス)の心の声が聞こえる。  ”蘇生の魔法があれば、(われ)は永遠。自由に、欲するがまま、この世の欲望を貪り食らい、何者も恐るるに足らず。  だが、その永久(とわ)(すべ)が手に入らぬのなら……”   (他の誰かの手に渡る前に根こそぎ潰そう……? なんて酷い……)  夢魔が自分の頭部を覆っていたフードを外した。現れたのは凍り付くほどに美しい相貌の男。 (この人がボクの仲間を。でも夢魔って……?)  美貌の黒い魔精霊(マギフェラス)が、ボクの視界から螺旋を描いて掻き消える。  次に見えたのは、同じ美しい魔精霊(マギフェラス)でも纏っているのは白いローブ。 (あ……!)  長めのプラチナの髪を無造作に束ね、精悍な面差しに柔らかな微笑みを浮かべた魔精霊が、岩場に隠れた小さな男の子に近づいていく。 『おチビさん。……名前は? 自分で言えるかな?』 『……ミンク』 『そうか。……おいでミンク、私と行こう。ここは危険だ……』
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