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【エリア0:深淵】Scene:0. プロローグ
この世は様々な種族に溢れている。
人間、獣人、精霊、小妖精……細かく分ければキリがない。
そして当然個々の能力には違いがあり、いわば弱肉強食の理は免れない厳しい世界だ。
とはいえ、異なる種族が総じて相容れないというわけではない。
『ぬぅ……! ワシの負けじゃ。契約通り、お主の為にワシは魔道具を作ろう』
『ありがとう。キミが僕の召喚霊になってくれたら本当に助かる』
とか。
『やだぁ、負けちゃった。仕方ないわね、貴方は今日からアタシの召喚主よ。つまりご主人さま♥ 何か用があったらいつでも呼び出してね』
『やったぜ! あんたの雨の魔法があればウチの畑は日照り知らずだ!』
とか。
それぞれの基準に基づいた主従関係や友好関係を結び、イイ感じに助け合う者たちも数多い。
だが当然、その関係も良いモノだけではなく──。
『……断る。貴様のような、命を食い荒らし世を乱す事のみを悦とする闇の輩に、我ら一族はどのような力も委ねるわけにはいかぬ。去ね』
『ほう……ならばこの場で皆殺しだが。そのような事、出来ればしたくない』
──それは星のきらめく瑠璃色の空が美しい夜だった。
『君たちの能力は貴重で稀少だ。この里が潰えれば、もう他に同じ魔法の使える者はおらぬやもしれん……』
夜空と同じくらい美麗な、とある魔精霊たちの隠れ里に、黒いフードを被った闇の妖魔が現れた。
『だからこそだ。我らが貴様を受け入れる事はすなわち、世の膿を不死にしてしまう事』
『そうだ。我が欲するのはこの世で君たちだけが駆使する能力、蘇生の魔法。さあ、召喚契約の魔法陣を提示しろ』
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