【エリア11:哀しみの館】Scene:21. 禁じられた運命

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「……ポルトくんが助かっても」  今を逃したら、きっと何らかの策を講じられてしまうだろう。   「このままじゃボクは、ルークスを絶対的な存在にしてしまう。殺戮を繰り返し、死をも恐れない脅威の夢魔に」  逃げても、召喚されたら戻る他はない。生涯ボクはルークスの道具であり、そして……人形。 「ならば! あの条件を飲めば良いではないか……お前次第で我はもう殺さぬと……!」 「ルークスを憐れむことはあっても、愛することはできない」 「……ッ……!」  たとえルークスが妖魔ではなく、天使でも神さまだとしても。   「もうボクの魂はジェダさんの色になってるから……無理なものはムリ」  出会った瞬間からボクの全部が彼に染まっていって、今は完全にジェダさん一色。この先はどんな色にも染まらない。  本当は偽りの愛を誓ってルークスを止める事も考えてみた。でもきっと絶対に、この気持ちは隠し切れない。……騙せない。   「召喚霊(サマン)である以上、ボクはルークスに逆らえない。一生人形として生きて殺戮を目の当たりにして、ポルトくんも救えない。そんな事の為にボクは生まれてきたんじゃない。……だから」  ジェダさんの色のままルークスに囚われた魂。せめて最期にその魂を開放したい。 「ポルト! ポルト……っ……、あぁ、あああ……!」  アモネさんがポルトくんの手を握って嗚咽を漏らした。その手も爪の先から霧となって消えていく。もう時間がない。 (ごめんね、ジェダさん……)  ドームの向こうに心話で語り掛けた。  彼はすぐに顔を上げて、ボクを食い入るように見つめてくる。 【ミンク……やめろ】  胸に響くその言葉と、今にも崩れそうなジェダさんの心。それを感じ取れただけでもう充分。  ありがとう。  ボクはあなたに幸せを教えてもらった。それだけでも生まれた意味がある。 「……契約(コントラクトゥス)」  ボクはローブの腰紐を解いて、下腹部の魔法陣に手を触れた。  ”コアクトス・ディスペラ”。たったこれだけの宣言でボクは夢魔から開放される。  迷いなんか、……ない。 「やめなさいミンク! 頼む、やめてくれーー!」  ネフラさま、大好きだよ。育ててくれて、守ってくれてありがとう。 「……お前は俺の飼いウサギだろ……」  もうジェダさんの声は聴かない。耳にも心にも蓋をして。 「そんな勝手、許さねぇええ!」  心を澄ませて、最期の宣言を。 「強制(コアクトス)(ディ)……」 「──コアクトス(強制)ディスペラ(解除)!!」  高らかに宣言したのは、──ボクの真正面。
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