【エリア11:哀しみの館】Scene:21. 禁じられた運命

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(え……)  額を押さえる彼の指の間から、ガラスが砕け散るように光の欠片が霧散する。  それは紛れもなく、ボクの魔法陣(マギアグラム)の消滅。 「な、なんで……ルークス!」  彼が、額から外した自分の手を見つめポツリと呟いた。 「……わからぬ」  掠れるテノールの声。 「ミンクが死ぬのが……嫌だった」 「……!」 「だがもう、お前は我のモノでは……」  ルークスがクシャッと顔を歪めた。まるで子供が泣くように。  底知れぬ深い闇を思わせたルークスの魔力(マギア)が、みるみるうちに萎んでいく。 (ボクより先に宣言した……という事は)  強制解除をしたのはルークス。魔力やステータスの全ては枯葉一枚ほどの重さとなり、彼の命の器ももう。 (もって数日……)  これまでボクの意識を覆い尽くすほど大きく感じていた彼が、今はこんなにも小さい。  その時、ボクたちを取り巻いていた審判のドームが音もなく掻き消えた。 「ミンク!」  ジェダさんとネフラさまがこちらに駆け寄ってくる。 「……行って、ルークス」 「なに……?」 「ここから消えて! 早く!」 「くっ……!」  ルークスがローブを翻し、姿が滲むように見えなくなっていく。  その気配が完全に消えたのと同時に、ネフラさまが走って来た勢いそのままにボクを抱きしめた。 「ああミンク、ミンク! なんて無茶を……いま宣言したのは夢魔の方だね? よかった……!」 「…………」  声を詰まらせるネフラさまの肩越しに、歩調を緩めたジェダさんが見える。 「あの野郎は……夢魔はどこへ」 「逃げたよ……。それより今はポルトくんを!」  頭がぐちゃぐちゃで心の中もぐちゃぐちゃ。でもまずやらなきゃいけない事がある。 「アモネさん、下がってて!」  慌てて駆けつけた時のポルトくんは、手足がうっすら霞んでいるもののまだ身体は残っていた。 「ポルトくん……ごめんね。どうか戻ってきて」  彼の胸元に両手を押し付け、自分の魔力をそこに集める。……けれど心が乱れて出来る気がしない。呪文(スペル)が唱えられない。
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