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(……どうしよう。早くしないとポルトくんが消える。でも魔力がザワついて……!)
ふいに、ポルトくんの胸に置いた両手にもう一つの手が重なった。
「……落ち着け。無理やり集中しようとしてもダメだ。魔法ってのはな、効果が出た時の事を想像するとうまくいくんだ」
ジェダさんがボクの手を握ってそう教えてくれる。
「効果を想像……?」
「奈落の門なら敵がスコンと穴に落っこちたトコ。今なら……そうだな」
隣でポルトくんを見下ろしていた彼がボクを見つめた。
「この子が目を開けて笑うところ……とか。ああ、それからコレいるか?」
何を思ったのか彼が自分の腰のあたりからゴソゴソと何かを取り出す。
「あ……!」
それはスヤスヤと寝息を立てている二代目ラピ。その尻尾には瑠璃の石が括り付けられている。
「コイツは役に立たないが、その石は力になるだろ。お前なら出来る」
「はい……」
すると、ボクたちの手の上にさらに細い指が重なった。
「ミンクくん。ポルトくんは可愛いモノが大好きな子なんです。目が覚めてミンクくんを見たら、きっと懐かれますよ」
「フルウさん……」
「ミンク、私もついてる。……必ず出来る」
ネフラさまの手が次に重なる。祈るような目をしたアモネさんも、ボクを見つめて頷いた。
ボクにはこんなにも多くの仲間が傍についてる。だから、自分の力以上のモノがきっと出せる。
「うん……。みんな手を離していいよ」
ポンとボクの肩にラピを置いて、ジェダさんとみんなの手が離れた。
大きく深呼吸をして、目の前の命に改めて向き合う。
「……ポルトくん。夢魔に襲われる前の君に……戻って」
どうか目を開けて。ボクに笑いかけて欲しい。
ラピの尻尾の瑠璃がふわりと青く光り出す。それと同じ色の魔力が、ポルトくんの胸元に置いた手から溢れる。
ピンと張った糸のような感覚。それはボクの魔法が整った証。
「──テンプス・アレイド」
考えるより先に、唇から呪文が溢れた──。
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