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【エリア1:王都オルディウス】Scene:1. 可愛いは正義
「らんらんるー♪ るんるんらー♪ えっと、ハンカチ、チリ紙、薬草……っと」
ワクワクが止まらない。出発は明日だけれど、もう腰ベルトのポーチに持ち物を入れて準備は万端。鼻歌まで出てしまう。
「短剣も装備しとこ。忘れたら困るもんね」
すでに磨いてピカピカになった愛剣をホルダーに収める。それだけでも何となく身が引き締まる思いがするから不思議だ。
ボクは足取りも軽く、部屋の窓を開け放った。夕焼けの柔らかな陽が部屋いっぱいに挿し込んで、なんだかとても心地良い。
「あ! 王さまだ。オルディウス王―、畑仕事ですかぁー?」
窓の下に見えた小さな菜園に向かって、ボクはブンブンと手を振った。土を掘り返していた老人がこちらを仰ぎ見て、麦わら帽子のつばをあげる。
「おおー、ミンクか。なにやらご機嫌じゃのうー」
「うん、ご機嫌ですー」
ボクの部屋は王宮の中庭に面した二階にある。下の菜園は王さまが趣味で拵えた場所だが、畑仕事する王さまってちょっと珍しいかも。
(今日も都は平和だったな……)
それはひとえにこの国の守りを固める剣士や魔導士たちが優秀だから。
かつてそれを指揮して育てあげたのは他でもない王さまらしいけど、今の麦わら帽子を手拭いで巻いた姿からはちょっと想像できない。ごめんね、王さま。
「ふぉっふぉっ。見習い召喚士くんがご機嫌なのは、いよいよ明日初めての召喚獣契約にいく日じゃからかのう」
「そうでーす。ボク嬉しくって」
「うんうん、ワシも初めての時はそうじゃったよ。あまり気負わずにな」
「はぁーい」
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