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掘り返した人参の土を払って、王さまがまた顔を上げる。
「ミンク=ラピ、そなたは良い子じゃ。なにより可愛い。きっと相手の召喚獣もソコのところを汲んでくれるじゃろうて」
「可愛いって、ボク男の子だよ? そんなコトで召喚獣に認めてもらえるとは」
「バカちんが。可愛いは正義ぢゃ! それでナニゴトもまかり通ーーる!」
まあ……いいけど。
ボクはこのオルディウス王国の魔導召喚士……の、まだ見習い。様々な能力を持つ魔獣や魔精霊を召喚できるようになって初めて召喚士と名乗れる。
「とにかく、明日は頑張ります! 早く立派な召喚士になってこの国の人をしっかり守るからねー」
それがボクの生きる意味。そして孤児だったボクをこんな風に何不自由なく育ててくれたこの国への恩返し。
「大きな声が聞こえると思ったら……下に王が居るのかな?」
穏やかな声に振り返ると、そこには上級召喚士の白いローブを身に纏い、少し長めなプラチナの髪をゆるく束ねた男性が立っていた。その面差しはキリリと端正でありながら、つい見とれてしまうほど麗しい。
「ネフラさま。うん、王さまがボクに召喚契約がんばれって」
「はは。王もミンクの事は可愛いとみえる」
ボクの隣からヒョイと窓の下を覗き込んで、ネフラさまがミントグリーンの目を細める。
「王よ、そろそろ日が暮れますよ。夕餉の時間までには切り上げてくださいね」
「なんじゃネフラ。年寄りの楽しみを取り上げるでない」
そう言って笑い合う二人の間には、長年の相棒である信頼の空気が感じられる。
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