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「誰かは秘密だ。明日の集合場所に行けばわかる。ちょっとビックリすると思うよ」
彼の指先が、ボクの髪に留めた飾り石を楽しそうに弄ぶ。
左右の髪を小さく束ねるこの二つの石は幼い頃にネフラさまがくれたお守りで、いつもボクの髪で揺れている。
「ただし、契約には一人で挑むんだ。付き添いはあくまでも召喚獣の棲み処へ行くまでの援護。この飾り石も決して外さない事。いいね」
「はいっ!」
元気に応えると、ネフラさまは苦笑いをしながらボクに一枚の羊皮紙を差し出した。
「挑戦する召喚獣は炎の魔獣、フランマ。棲み処への行き方はここに書いてある。この通りに進んで行けば辿り着けるから」
「炎属性の!?」
羊皮紙を受け取って内容に目を通す。
炎のフランマと言えば、気難しくて有名な実力派の召喚獣だ。確かネフラさまとも契約していたはず。
「わあ……こんなスゴい魔獣をボクが」
もうやるしかない。氷や水の魔法をおさらいしておかないと。
ブツブツと攻撃のパターンを練っていると、突然ネフラさまに頭からギュッと抱きしめられた。
「明日の夜にはミンクも一人前の召喚士か……もう大人だね。保護者代わりだった私の立場もいよいよ終わる」
「ネフラさま……?」
ボクは赤ちゃんの頃、都から遠く離れた山間の川辺に捨てられていたらしい。
それを任務で遠征していたネフラさまが見つけ、この王都に連れ帰って王宮で育ててくれたのだ。
「そんな。ネフラさまは尊敬する師匠である以上に、いつまでもボクの大好きな親でありお兄さん……」
「それを私はずっと辞めたかった」
「え……!」
彼に抱きしめられたまま、そろそろと顔を上げる。
「誤解しないで欲しい。ミンクが煩わしいとか、そういうことじゃない。むしろ」
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