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こちらを見下ろす瞳はやっぱり優しくて、確かにボクの事を迷惑だとは思っていないようだけど。
「これまでとは違う形で、君と向き合いたいんだ」
「違うカタチ?」
やっぱりよくわからない。
「大事に育て過ぎて、私自身を追い込む羽目になるとは。どうしてくれる」
「どうって……」
「保護者の立場では、教えたくても教えられない」
難しい謎かけに、ボクの首が真横に倒れてしまう。
「ふふ。今はこれ以上は言えないな。続きは明日にしよう」
その微笑みがいつもよりずっとずっと優しくて、おまけになんというか……艶めいていて。
(うわ……なんかポーっとしちゃう……)
すると彼はひとつ小さな咳払いをして、穏やかながら厳しい師匠の顔に戻った。
「まずは契約を無事結んでくること。明日の十二時、王都外のカクトス砂漠にある一本サボテンの前に集合だ。そこからフランマの元へ一緒に……ではなく、……向かいなさい」
「はい」
「いい子だ。ああ、もうこんな子供扱いも……」
ネフラさまがまだ何かを言いたげにボクをじっと見つめる。その目がなぜか胸の奥をザワザワと揺らす。
「早く私を、この苦しい立場から解放してくれ。……待っている」
再び抱きしめられ、ボクの耳朶にそんな吐息混じりの言葉が触れた……。
──その後、軽く仮眠を取ってから、ボクは真夜中の十二時に間に合うように集合場所である砂漠のサボテンへ向かったのだが。
実は付き添いはネフラさま自身が行くつもりだったこと。
そして出発時間が夜ではなく昼の十二時だったことを。
「さぁて……いよいよだ」
ボクは、何もかもが終わってから知ることになる──。
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