23.日曜の恋人ってやつ、やろうぜ

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 ベッドルームのドアが開き、そこでパンツ一枚、上半身裸で濡れ髪の彼が現れる。 「……起きた」  英児が笑う。初めての寝起き……見られた。でも琴子も笑っていた。この野性的な彼にとっては、むちゃくちゃでぼさぼさになっている姿ですら『自然』なんだと愛してくれると知っているから。 「これ。食べるだろ」  上半身裸のシャワー後の男。その男の片手に白い皿とグラス。それを彼がベッドテーブルを出して琴子の目の前に置く。  白い皿にきちんと切り分けたオレンジと、琴子が好きなアイスティー。 「ありがとう……」  独身の男が事足りる程度の家事で暮らしてきた彼だったから、彼女の幅広い家事を喜んでくれるこの頃。それでも、彼女が泊まった朝は男の彼からこんなことしてくれるなんて……。琴子は感激してしまう。  もさっとしたまま、裸のまま、琴子は手を伸ばしひとまずグラスのアイスティーを飲んだ。  冷たくてすっきりして目が覚める。この家に通うようになって『自分用』に作り置いているドリンク。それを彼が目覚めの一杯として持ってきてくれる。
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