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まずい、どうしよう……? 夜を横行する男と接触してなにかトラブルにでもなったら!?
一気に身体が硬直する。しかもくわえ煙草のもっさい男! 行かなくちゃ、関わらないよう声をかけられないように、さりげなくここから去らなくちゃ。急に琴子の心臓が騒ぎ出す。
「そこ、いい?」
煙草をくわえたままの男が、かったるそうに目を細め話しかけてきた。自販機前に佇んでいるだけの琴子はビクッとする。
「買ったならどいてもらえる」
作業着風の紺色ジャンパージャケット。なにかの作業員? ぶっきらぼうに言った彼だが、話しかけた女がいつまでも固まって動かないので、訝しそうに下から上までじろじろと琴子を眺め始める。そこでやっと琴子ははっとし自販機から退く。そうだ、関わらずに早く去ろう。踵を返し足早に帰り道へと戻る。
離れたのに、琴子の背後から煙草の匂い。湿った空気に乗って琴子を追いかけてくるようで顔をしかめる。この道をまっすぐ、次の角を曲がったら母が待つ家がある。琴子は急いだ。
そのうちにバタンと車のドアが閉まる音が聞こえ、ホッとした。
男は琴子に関心など持たず、車に乗り込み何処かに消えていってくれる。
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