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 久々に、便箋を取り出してみました。  あなたが充実した日々を送っているであろうことは、なんとなく想像しています。便りがないのが元気な証ってよく言うものね。元気でいてくれれば、お母さんなんの文句もありません。  あなたがあなたのやりたいことをやりたいように出来ている毎日でありますようにと、遠くから毎朝祈っていますから。  けれどね、もしかしたら、その姿をずっとは見ていられないかもしれません。  検診に引っかかってしまって、明日再検査に行く予定です。  お母さんは体だけは丈夫で、それが取り柄だと思ってたのに、このままじゃ取り柄がなくなっちゃうって焦ってます。大したことないといいんだけど、そうしたら笑って報告しますね。  お友達なんかも割と大げさに言われて緊張して再検査に行ったらなんともなかったなんてことよくあるって言ってくれているから、その言葉を信じてるんだけど、でもやっぱり怖いです。  お母さん、いつまでも生きていられる訳じゃないことを、この年になって気付きました。お母さんは馬鹿だから、今までなんの疑いもしてなかった。なんの根拠もなく、自分は大丈夫だと思ってました。  けれどそうじゃないかもと思った時、あなたに会いたいと思いました。もっと声を聞いて、顔を見て、たくさんお話ししたい。  わがままなお母さんのために、たまには帰ってきて下さいね。  それでは。またお手紙書きますね。  心配性の母より。
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