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 母の車は黒いセダンだ。スナックの客の付き合いで高い車をローンで買った。だから自分の軽と乗った感じが全然違う。美晴は慎重に運転した。  国道を走って秩父に向かう。通りの右側や左側には飲食店やホームセンターなどが並んでいる。今は十時だ。お昼は秩父で蕎麦でも食べよう。美晴の心は弾んだ。  段々と道が細くなってきた。右側が山で左下は荒川だ。気分がよくなってきたのでスマホで音楽を流す。  気分よくドライブしていると目の前にタヌキが飛び出して来た。美晴は驚いてハンドルを左に切る。ガードレールに衝突した。ボンネットがぐにゃりと曲がる。  美晴は急いで自分が働いている中古車屋さんに電話した。社長の息子が出た。 『もしもし、坂城美晴です。事故を起こしちゃいました』 『どういう事故なの?相手はいるの?』 『自爆です。動物を()けたらガードレールにぶつかったんです』 『取り合えず警察を呼んだほうがいいよ。レッカー車は向かわせる。場所は何処?』  美晴は社長の息子に詳しい場所を説明した。警察に連絡を入れる。自分はとんでもないことをしてしまった。道路がみるみる渋滞していく。
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