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 その年の八月に終戦を迎え、暑い夏が過ぎ、秋の枯れ葉が舞い、寒い冬になっても、節子は見つからなかった。  遺体収容所にも度々行ったが、妹の亡骸(なきがら)は無く、清太郎は節子はどこかで生きていると信じた。  運良く空襲を逃れたご近所さんが、新潟に疎開するとき、「清太郎くんも一緒においで」と親切に声をかけてくれたが、「それじゃ節子が可哀想じゃ」と断り、節子を探し続けた。  一日も早く見つけて、「もう、心配いらないよ」と抱きしめてあげたい。自分も食う物も食えずに骨と皮だけの戦災孤児だったが、節子への強い想いだけが、清太郎を生かした。
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