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清太郎は肉体が滅んだあとも、節子を見つけてあげたい気持ちだけは、生き続けた。
だから、街並みが目まぐるしく変わり、かつての焼け野原に高層マンションが建っても、ピエロの格好のままで、子どもたちに芸を披露してみせている。
赤鼻のピエロ清太郎の足元には、ダンボールに手書きで、こう書いてある。
いもうとのセツコをさがしています。みつけたらおしえてください。おれいにたくさん、芸をひろうします
ノサカセイタロウ
子どもたちには、赤鼻のピエロと足元のダンボールが見える。
ピエロがおどけると、子どもたちがきゃっきゃと喜び、清太郎も嬉しくなる。
いつか「お兄ちゃん!」と節子が駆け寄ってくる日を夢見て、今日も明日も明後日もずっと、清太郎は赤鼻のピエロを演じ続ける。
— おしまい —
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