かみさま

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 翌日は、雨が降っていた。  しとしとと止むことなく続く雨だった。  こんな日でも、黒樹は店を開けている。客が来ることは、いつもより少ない。だから、黒樹の機嫌はよかった。  午後3時、コーヒーを飲む黒樹は、美しい微笑みを浮かべて、正面の窓から雨の路地を見つめていた。  そして、ゆっくりと目を閉じる。  静かな空気を感じながら、ゆったりとした時間を楽しんでいた。  楽しんでいた、のに――――。  黒樹は、眉間にシワを寄せ、ため息を付いた。  リンと重たい鈴の音がしたのはその後で、控えめな声とともに、男が一人入ってきた。 「……すいません、今、いいですか?」 「どーぞ……」  渋々受け入れて、黒樹は、椅子に座り直した。男とともに入ってきた人物を睨みつけた。 「おかえり、楓」  いつもより低い声、いつもより冷たい瞳、それに臆することなく、男の後ろから入ってきた楓はニコリと笑った。 「たーだいま、黒樹」  黒樹の不機嫌を正面から受けてなお、楓は非常に機嫌がいい。  楓は一緒に来た客を黒樹のいる丸テーブルへと案内して、自分は黒樹の後ろに回る。 「昨日話した、迷子になってたお客さん連れてきた」 「宣伝しなくて結構だって言わなかった?」  二人のやり取りを、オロオロと聞いていた。 「あの、すいません。都合が悪かったですか?」 「いや、」  それでも面倒だという声をして、黒樹は答えた。 「君は悪くない。僕の不機嫌の全ては、ここにいる楓に向けてるものだから」
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