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今から何年前のものだろう。赤茶けた写真は空気に触れたらすぐに溶けてしまいそうなくらい脆く見える。舞雪が生まれる前に、自分の父親は亡くなったと母親に聞いたから、たぶん二十年近く前の写真なのだろう。
カメラの前だというのに、むすっとした表情で直立不動している姿が滑稽だ。
舞雪は写真の中の父親の輪郭、鼻梁、身体を指でそっとなぞりながら、静かに反芻する。
「……似てる」
ごくり、唾を飲む。手にしていたフォトフレームを投げ出し、舞雪は仰向けになる。
……今日、病院ですれ違うときに目が合った木梨って名前の先生と、やっぱり似てる。
だけど、他人の空似という言葉だってあるし、父親がいるとしてもあんなに若いわけがない。顔見ただけで逃げちゃったから、きっとおかしな女だって思われただろうなぁ……
天井の染みを眺めながら、考え込んでいるうちに、薬が効いてきたのだろう、舞雪は穏やかな眠りに入っていく。
* * *
異変に気づいたのは、二学期になってからだった。
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