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秘密を抱きつづけるのは、別に苦ではなかった。それが、自分ひとりだけの秘密ならば。
木梨は沈み込んだ白羅を、どうすることもできずにいる。
「仕方ないって、わかってるけど。もし、泊瀬が悪戯しなかったら、睦媛も大兄も……」
白羅は弟がひとりで出歩いているのを放っておいた自分に責任を感じている。そして、睦媛と大兄が死んでしまった事実に、改めて打ちひしがれている。
弟妹の前では強がっている白羅だが、木梨の前では緊張の糸が切れるのか、こうして救いを求めるようにやって来る。
膝頭を両腕で抱え込み、うなだれている白羅は、木梨からの言葉を待っているようだ。
だが、木梨は何も言えない。慰めることも、責めることも、部外者である自分が口にすべきことではないと理解しているから。
それでも白羅は木梨に言わずにはいられない。自分が木梨を巻き込んだ。自分が弟をちゃんと見張っていなかったからあんな悲しい出来事が起こった。自分が至らなかったから大兄も睦媛も死んでしまった。自分に能力がないから大兄を蘇生させることができずに違う人の魂を呼び寄せてしまった。自分が……
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