第一部 天(そら)を乞う雪

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 高校三年になって、周囲は受験一色に染まって、舞雪もその輪の中に気づいたら入れられていて、抜け出せなくて、混乱した状況で。  進路希望調査用紙。白紙で出したら怒られた。進学か就職か、聞かれなくてもわかっているだろうと思ったのに。周囲の人間は常にクラスで十位内に入っている舞雪が進学するのを当然だと考えていたみたいだけど……  これ以上母親に苦労させるつもりはないと、舞雪は就職を希望したのに、舞雪のことをわかってくれると信じていた母親でさえ、我慢しなくていいのよと言い出したのだ。  奨学金やアルバイトを使って自分で学費を稼ぐ方法もあったんだと気づいたのは、母親の言葉を聞いた後。  結局、九月の下旬になってようやく舞雪は本格的に受験勉強をはじめることになる。  学びたいことはたくさんあった。学んでもいいと言われたらもっと学びたくなった。我慢しないで自分で決めていいと言われて、舞雪は浮かれた。
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