59人が本棚に入れています
本棚に追加
純粋に、どうしてと聞かれて、舞雪は恥ずかしく思う。父親に似ていて驚いたから、なんて言ったら馬鹿にされてしまいそうだ。
だから、考え込むふりをして、黙り込む。
その間に看護師が戻ってきたのだろう、目薬の小瓶を片手に、木梨が小声で礼を言っている。
カーテンが閉じられ、木梨が軽く息をつく。
「……軽井沢さん、目薬さすからじっとしてくださいね」
さっきよりも口調が丁寧になった気がする。舞雪は首を縦に振って、椅子の上でじっとする。
「これは、瞳孔を開かせるお薬。少しはこれで視力が戻ればいいんだけど」
――調節能力が劣っているのか、それとも単なる近視なのか、それとも別の病気か、と木梨は舞雪の症状を心の中で考えていた。
……まさか彼女を診るとは思ってもいなかったな。
そっと前髪に触れられ、漆黒の瞳に目薬をさしていく。右眼と、左眼と、一滴ずつ。
こうしてみると目薬をさしてもらうってセクシーな行為だな、と舞雪は考えて、顔を赤くする。ここが暗い部屋でよかった。蛍光灯の下だったらきっと木梨に自分の顔が赤いことがバレてしまう。
「……さん、軽井沢さん」
「あ、はいっ」
最初のコメントを投稿しよう!