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「そんなに、たいそうな病気じゃないから、心配しなくてもいいんだよ。オトナになったら必ず治る病気なんだから」
とりあえず、お薬を出しておくから、毎日朝と夜に点眼するんだよと言われ、舞雪はこくりと頷く。
* * *
病院は苦手だけど、ここの屋上は好きだ。と、舞雪は思う。
精神科と眼科で処方された薬をスクールバックに入れて、ベンチに腰掛ける。
スタッフが手入れをしているのだろう、冬が近いというのに、屋上庭園の花壇には花が溢れていた。
冬に花開くヒースの白やピンクの花々を囲むように、赤や紫のパンジーが咲いている。
そうかと思えば、クリスマスローズが至るところで蕾を膨らませている。
電線が一つも遮っていない晩秋の淡い紫色の空を眺めていた舞雪は、自分に近づいてくる人影に気づき、声をあげる。
「六花さん!」
「一週間ぶりだね、まゆちゃん」
六花は舞雪の隣に腰掛け、最近どう? と小声で尋ねる。
舞雪は寂しそうに笑って、相変わらずですと応える。
「あ、そうだ。六花さんは、心因性視力障害って知ってますか?」
「心因性、視力障害……聞いたこと、あるような、ないような」
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