第一部 天(そら)を乞う雪

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 六花は今現在精神科で働いている。だから眼病についてはあまり詳しくないのだろう、うんうん考えて、やっぱりよく知らないわと残念そうに口にする。 「あたし、それなんだって……木梨先生が言ってた」 「そっか、今木梨先生眼科に入ってるんだっけ。じゃあ、診てもらったんだ?」  まさか彼に診てもらうとは思ってなかったのだろう、舞雪は首を振って、診てもらっちゃったと恥ずかしそうに、頬を朱色に染めて呟く。  そんな舞雪を、かわいいなぁと六花は思う。 「怖くなかった?」 「今日は、大丈夫だった」 「へんなの」 「ほんとですね」  そして、ふたりで笑いあう。 「まゆちゃんって年上が好みなの?」 「え……なんでそうなるんですか」 「だって。顔赤いよ?」  舞雪は慌てて鞄からハンドミラーを取り出し、自分の顔を確認する。赤くはないが、頬がほんのり桜色だ。 「赤くなってないです!」 「じゃあ、さっきまで赤かったことにしよう」  六花は頬を膨らませた舞雪を宥めるように、そっと囁く。 「あのね、まゆちゃん」  遠くを見るように、六花が口にした言葉は、少しだけ、舞雪を困らせた。
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