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六花は今現在精神科で働いている。だから眼病についてはあまり詳しくないのだろう、うんうん考えて、やっぱりよく知らないわと残念そうに口にする。
「あたし、それなんだって……木梨先生が言ってた」
「そっか、今木梨先生眼科に入ってるんだっけ。じゃあ、診てもらったんだ?」
まさか彼に診てもらうとは思ってなかったのだろう、舞雪は首を振って、診てもらっちゃったと恥ずかしそうに、頬を朱色に染めて呟く。
そんな舞雪を、かわいいなぁと六花は思う。
「怖くなかった?」
「今日は、大丈夫だった」
「へんなの」
「ほんとですね」
そして、ふたりで笑いあう。
「まゆちゃんって年上が好みなの?」
「え……なんでそうなるんですか」
「だって。顔赤いよ?」
舞雪は慌てて鞄からハンドミラーを取り出し、自分の顔を確認する。赤くはないが、頬がほんのり桜色だ。
「赤くなってないです!」
「じゃあ、さっきまで赤かったことにしよう」
六花は頬を膨らませた舞雪を宥めるように、そっと囁く。
「あのね、まゆちゃん」
遠くを見るように、六花が口にした言葉は、少しだけ、舞雪を困らせた。
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