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グイと詰め寄る希子を、優香は引け気味に押し返す。
「っ近いよ……。
眠子神社あるだろ? 夕暮時に池の前にある祠に向かって、好きな人の名前と自分の名前を交互に百回唱えると望みが叶うって。てか、お前すっかり噂に疎くなったな」
「だって早見君が好きなの調べてたら、噂系チェックする暇ないもん」
「ご執心だな。困った時の神頼みって言うし試してみれば?」
「なるほどねぇ……うむ。それもありか」
ーーかくして土曜日の今日、夕暮れ時の神社で臨んだわけである。池をぐるりと周った奥にポツンとある祠で無事に唱え終わった希子は、これでなんとかなるはずと、根拠無き自信に満ち溢れた。そして、さあ帰ろうとしたのだが、その瞬間に暗転。なんと気づけばヒヨコに……。
水面に映る姿に、度し難いとしながら視線を上げる希子。
(これヒヨコだ……え、てか服どこ、カバンなくね? これ夢?)
池の岩に嘴を勢いよくツンと突き立てれば、ジーンと伝う確かな刺激。
(痛っ! ムリムリ現実……えっどうしよ、何で? 考えろ私。何か方法あるはず……ていうかなぜヒヨコ?
こういう時普通、猫とかさ狐とかさ……そういうのじゃないわけっ! なぜにヒヨコ……)
しばらく呆然としたが……膠着状態を打破すべく、まずは自宅へ戻ることにして帰途へ着く。
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