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視界は地面から数センチの景色。目下広がる水面を覗けば小さな嘴が映り足元を見れば鳥足、声を出せばピヨ。
(え嘘でしょ。なんで? なんでヒヨコになった……?)
ーーそれは昨日のこと。教室でガヤガヤ賑わう昼時。小さなアホ毛がピンと立つ大貫 希子は机にダラリと突っ伏す。そんな希子を見かけた親友の優花は
「ヒヨコ、また悩んでんのか?」
とクールな声でアホ毛を摘む。ちなみにヒヨコは希子のあだ名。興奮すると忙しなく挙動することや名前などが由来だ。
「どしよぉ……どうすればいい? いくら頑張っても距離縮まらん」
涙目で腕にしがみつく姿に、やれやれと溜息。
「早見にどんだけ惚れてんだよ」
「だってぇ、好きになっちゃったんだもん!」
ーー希子が早見に出逢ったのは、高校へ登校する際に貧血を起こして動けなくなった時だ。
視界がモノクロになり地面に蹲っていたところ、不意に声をかけてきた男子高校生がいた。彼は面識が無いにも関わらず希子の身を案じ、コンビニで飲み物を買って休ませるだけでなく高校まで付き添い……その後、校門に門番担当の優花がいたことで、彼が一駅先の高校に通う優花の幼馴染である早見だと判明した。
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