幸福の最中

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幸福の最中

朝が来た 来てほしくない ギリギリまでこの幸せに浸っていたくて 私はベッドから出れない スースーと寝息をたてながら眠っている栞を見つめる ニヤニヤとしてしまう こんな顔見られたらドン引きだろう・・・ ”ぴぴぴぴ” いつもの時間にスマホのアラームが鳴る その音で栞が目を覚ます 想像していたとおり 慌てることなく ゆっくりと目をこすりながら体を起こす 私の方を見て笑顔になる 「悠ちゃん、おはよう」栞 そう言って子猫のように顔にスリスリと頬ずりをしてキスをする 私も彼に抱き着くように絡みつき 愛おしい顔でキスを受ける 幸せ 幸せ 幸せすぎて怖いくらい チラッと時計を見た栞は少し焦る 「もう7時半だ・・・遅刻だな・・・」栞 そっか ここから一回帰って 制服に着替えて学校へ行くのに この時間では間に合わない 「ごめんね」悠 栞は私をぎゅーっと抱きしめて 「悠ちゃんのせいじゃないよ」栞 そう言うと 私を押し倒して 「もう一回しよう」栞 にっこり笑って催促する 私は嬉しい気持ちを抑えきれなくて微笑んでしまうけど その気持ちをグッと抑えて 栞の肩に手を当てて突っ張るような姿勢で 「ダメ・・・遅れてもいかなきゃ!学校 シャワー浴びてきて 直ぐにオニギリ作っておくから」悠 私はベットの横に脱ぎ捨てていた部屋着を拾ってササッと着た 栞は少し膨れていたけど 少ししたらシャワーを浴びに浴室へ行った 9時前 私も出勤する時間 二人で鍵を閉めて部屋を出る エレベーターの中 一階について扉が開く寸前 栞は私のオデコにチュッとキスをして 開いたらすぐに 走り出して自動ドアの前まで行くと振り返り 「悠ちゃん、愛してるよ」栞 そう言うと投げキッスをして走って行ってしまった 私は恥ずかしくて顔を真っ赤にする また、にやける ふとまわりをみると 同じマンションのサラリーマンが目をそっらす 見られていた 「おはようございます」悠 挨拶をかわし 私は足早にその場を離れた 一日中 私はにやけてしまって 同僚や後輩に不思議な顔で見られる やはり 栞で頭がいっぱいだ 昼休み スマホを見る マズイ 早川からメール 気が付かなかった ”今度は部屋の前まで送らせてもらえたら嬉しいな また、誘います” どうしてだろう何も感じない それどころか面倒に思う 私はきっと悪い女だ 社会人として返信はする 当たり障りのない内容で・・・ そう言えば栞のスマホの連絡先って聞いてない 急に不安になる また 半年や一年 会えなかったらどうしよう・・・ あの彼女の話も聞いていないし 顔が曇る そうこう考えていると メール ??? 内容を開くと ”悠ちゃん 栞だよ 愛してるよ” 栞からだった いつの間に・・・ ”突然でびっくりした” すると直ぐに返信 ”悠ちゃんが寝てる間に 俺が勝手に登録したよ” 気が付かなかった 寝ている間に・・・だなんて 顔がまたにやけてけてしまう 私は今、幸せの絶頂にいた ずっとずっと思っていた片思いの相手から 愛されて 満たされているのだから こんな幸せな時はなかなか無い 怖いくらいだった それから栞は週に何度か部屋に来た 平日に来る時は夕食を食べたら帰っていった 休日前には泊まりに来た 二人で居れるこの空間では 私たちは極々普通な恋人同士のようにじゃれ合っていた 何かの度にキスをしたり ソファーに座るときは私を背中から包み込むように抱きしめてくれた 振り返ればいつも 栞の優しい笑顔が私に向けられていた だけど 外に出たら 外に出たらどう見えるのだろう? 昔から知っている人に見られたら 涼太がこのことを知ったら・・・私たちはどうなってしまうのだろうか? そんな不安は 幸せの大きさだけ私の心に広がっていた 栞はどういう風に考えているかは分からないけど 私の顔が曇るたびに 気が付くと直ぐに ギュッと抱きしめた
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