彼氏(下)

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彼氏(下)

山の夜風は冷たくて 上着を持ってくれば良かったと思っていたとき 後ろから バサッと大きなパーカーがかけられた 「お待たせ」純一郎 「ああ…うん」悠 後ろに立たれると 緊張してしまって 素っ気ない返事をしてしまった 純一郎は向かい側に座って 真ん中にランタンを置いた ふんわりとした灯りに顔が浮かび上がると 緊張しているのは私だけではないようで 彼も笑顔が強ばっている 勝手な期待をしているからか 直視するのは難しい 今までだって 二人になったことはある 飲み会の後 家に送ってもらったこともあるし 研究室に泊まり込んだときも 図書館で調べものをしたときも 今夜はドキドキしているせいか 目の前にいる彼は 今まで見てきた友ではなく 二割増しの男前に見える こんなにかっこよかったっけ❓️ まつ毛長い 手がきれい えっ、私 あのメールのせいで変な目で純一郎を見ている ダメダメ 私たち仲間は恋愛禁止 きっと話しは色恋ではなくて ゼミでの事かな❓️ あっそういえば今年の夏は皆でディズニー行こうって話してたから その話しかな❓️ 頭の中をグルグルグルグル ピンクと青が渦巻いている 「話しなんどけどさ…」純一郎 静かな声で話し始めた 私は彼の顔を見た 「あの…回りくどいこと好きじゃないから 言うけどさ 悠が好きだ」純一郎 妄想的中 私の呼吸が止まった 「大丈夫❓️」純一郎 「…うん…うんうん…うん」悠 言葉にならない 今、私はどんな顔してるのかな 人生初のモテ女子の様な状況に 正しい表情がわからない 「俺たち仲間だから この関係を崩したくなかったけど 近くにいるのに言わないのは 後悔しそうだから…」純一郎 私は小さくうなずく 純一郎は私の顔をのぞき込んで 「それは OKってこと❓️」純一郎 私は彼の方をちらりと見て 「いや、突然の事過ぎて 頭がまとまらないんだけど…」悠 嬉しいくせに 変な言い訳 「それは 無いってこと❓️」純一郎 あからさまに悲しそうな表情 私、彼を逃してしまう… だけど、私は純一郎が好きなのかな❓️ そりゃいい奴なのは知ってる 仲間だから よく見るとイケメンの部類だし 誠実 素直 賢い 清潔間があって 優しさの塊で… きりがないほど良いところは浮かぶ だけど 告白と言うイベントに気持ちが盛り上がっているだけなら 仲間として 彼に失礼だ 嫌いじゃないけど 好きだけど 仲間だから 自己満足で恋愛をするには 失うものが多すぎる そう思ったとき 今までキラキラしていた純一郎を見る視界が 通常バージョンに切り替わり ドキドキも治まった 一つ深呼吸をして 純一郎をまっすぐ見る 「私たち仲良しだから 純一郎 勘違いじゃない❓️ 私も好きよ…友達として…」悠 そう言うと 私は立ち上がり背伸びをして深呼吸をした 「勘違い勘違い 心が友情と愛情を取り違えたんだよ」悠 純一郎はしばらく私の方を見て 頭をくしゃくしゃとかいてため息をつく そして立ち上がり私をまっすぐ見て 「勘違いじゃないよ 勘違いだったら 友情壊すかもしれないのに 踏み出せないよ けっこうマジで考えたんだ で、告白してるんだよ 悠、簡単に終わらせないでくれよ」純一郎 悲しそうな顔 「ごめん」悠 思わず謝る 「悠は俺の事嫌い❓️」純一郎 私は横に首を振る 「だったら 彼氏に一番近い位置に置いてよ 友達より一歩リード 彼氏候補… じゃないな 彼氏前提の彼氏」純一郎 「何それ❓️」悠 思わず笑ってしまった こんなに必死な純一郎はじみてみたから 「悠は俺の事を友達として見ていたからさ すぐに男として見てもらえるかは分からないけど 頑張るからさ 即答で断るのはなしにしてよ」純一郎 知らなかった純一郎がこんなに可愛い人だなんて… ハートが彼にときめいた 私はにこりと笑って 純一郎に右手をさし出した 純一郎ははにかんで握手をした 人生初の告白 人生初の彼氏はさっきまで友達だった彼だった
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