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分からないといえば、昨日雪の中で死にかけてた黒い鳥も良くわからない奴だと思った。ここが白い山だから白い色を貰いにきたとか、神様にお願いするとか。そんなに白い色がいいんだろうか。自分が白い色だから、そんなに特別な色だとはおもわないだけなんだろうか。
雲の海の向こうが明るくなって、眩しい光が差してきた。雲がオレンジやピンクに染まりながら、太陽が昇るにつれて雲は少しずつ消えてふもとの景色が見えてくる。
ホシガラスも起きていた。
体中があちこち痛かったが、ライチョウが外に行く気配がしたので、そのあとをそっとついていって入り口に空いた穴から外を見ていた。朝日が上るにつれて、ライチョウの体が薄いピンクやオレンジに染まってきれいだった。つい、ホシガラスはため息をついた。
「ああ、いいなあ。白いライチョウさんは」
ライチョウは、そんな事はちっとも気がつかなかった。雲の色が変わるように、自分も同じように染まっているなんて思いもしなかった。朝日が昇るのを見終わって、そっと巣の入り口に戻っていった。
ライチョウが戻ってくるようだったので、ホシガラスは慌てて奥の方に戻って寝ているふりをした。ライチョウは、きっと「帰れ」というに違いない。
ホシガラスは「神様に白い羽をお願いすること」だけを考えて、ここまでやってきた。ライチョウが言うように神様が「ダメだ」ということなんか、これっぽっちも思ったことがなかったので、そういわれると不安になって夜はそのことばかり考えていた。
でも、やっぱりここまできたのだから神様にお願いに行こう。「ダメ」といわれたら、それでもいい。そう思ったら気持ちがスッキリした。
「おはようございます、ライチョウさん」
「ああ、おきていたのか。」
「ええ。ここの朝の景色はきれいですね。こんな朝日は見たことがありません。」
「今日は天気がいいからな。」
「昨日は助けてくださってありがとうございました。」
「行くのか。」
「はい。」
「そうか。願いがかなうといいな。」
思いがけないライチョウの言葉に、ホシガラスは驚いたが少しお辞儀をして飛び立った。
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