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青く澄んだ空に向かってホシガラスは羽ばたいていった。頂上に近づくと、生きものの気配がなくなり、白い雪と石だけしかないように見えた。空気はますます冷たくなり、羽ばたいても少しも身体が温かく感じない。それどころか、刺さるような冷たさで羽が凍りつきそうだった。
それでも必死で羽を動かしているうちに山の頂上についた。羽ばたきながら向こう側を見ると、見たことのない風景が広がっていた。山のこちら側とは違って、赤茶色く焼けたような山肌がずっと続いている。下のふもとには緑が見えるけれど、山肌には木も草も何もないように見えた。
しばらくホシガラスは眺めていたが、神様にお願いをしなければと頂上に降りた。雪が積もった中に小さな鳥居とその向こうに洞穴があった。洞穴の入り口にはツララが下がっていて、まるでオオカミかなにかの牙のように見えたが、ホシガラスは中に入っていった。
中は真っ暗かと思ったけれど、ところどころうっすらと光るところがあってホシガラスはその中を進んでいった。しばらく進むと行き止まりで、それ以上は進めなかった。神様はいないんだろうか。
ホシガラスは仕方なく、羽づくろいを始めた。ここまで飛んでくる間、必死だったせいかずっと手入をしていなかった羽はあちこちボロボロでひどい有様だった。丁寧に羽を整えているうちに、うとうとと寝てしまった。
はっと気がつくと、目の前に眩しく輝く人が立っていた。
「我の望みはなんじゃ」
「あ、あの・・・一枚でいいんです。白い羽が欲しいんです。」
「おお、それはなんとつつましい望みじゃの」
かんらかんらと笑う声は、まるで鈴のような澄んだ音だった。
「よし、望みはかなえてやろう。」
「ほ、ほんとうですか?」
「うむ。しかし、ワシの手伝いをしてもらいたい。」
「どんなことでしょう。私にできることでしたらなんでも。」
「森を作りたいのじゃ。」
ホシガラスはめんくらった。
「我もみたであろう。山のひどい有様を。あそこに森を作るのじゃ。」
「あの、私は鳥ですから木を植える手もありませんし・・・」
「木を植えよとは言ってない。我には木の実を集めてもらいたいのじゃ。」
「木の実・・・ですか。それなら私にもできそうです。」
「よし。頼むぞ。その木の実から芽が出て茂れば森になる。1つ芽が出るごとにお前には白い羽が1本生えてくる。」
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