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むかし、ホシガラスは普通のカラスと同じ真黒な姿だった。山に住んでいるわけでもなかった。普通のカラスと同じように里の森に住んでいたのだが、ある秋の日に森のはずれの木に止まっていたときに夕日をうけてミカン色に輝く草原を歩くキツネの、その金色の毛並みとしっぽの先が白く光るのが心底きれいだと思った。
「キツネさん、あなたはなんて美しいのでしょう。」
そんな事を言われてキツネは悪い気はしなかった。
「おや、カラスさん。ありがとう。」
「私もあなたのように美しい色の羽があればいいのに。せめてこんな真黒な姿じゃなくて羽根の先っぽだけでも白かったらなあ。」
「それならあの白い山にいくといいですよ。実は私もあの山の白い色を分けてもらったんですよ。山の神様にお願いしましてね。」
キツネはカラスにそういった。もちろん、そんなことは口からでまかせだったが。
「本当ですか?それでそんなにしっぽの先が真っ白で美しいのですね。」
「そうですとも。あなたも山の神様にお願いしたらどうです?」
どうせあんな遠くの山までは行けないだろうと思って、キツネはホシガラスにそんなことを言って去っていった。しっぽを見せびらかすようにふさふさと振って。
「それはいいことを聞きました。キツネさん、ありがとう。」
ホシガラスはキツネの言葉を信じて山に向かって飛んでいった。
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