第1話 見知らぬてんじょーだ!

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 えーっと、確かあれは……。  我が家の愛犬で家族の一員のポチ(柴犬、三歳オス)、の散歩をしているときの事だ。  一緒に町の中を散歩してたんだ。だけど、その日は雨が降ってたから傘を差してたんだよね。片手でポチのリードを持ってたんだけど、歩いてた道端に生えてたお花さんがとってもきれいだからちょっとだけ眺めよう思ったんだっけ。  でも、思いのほかじっくり集中しちゃってて、気がついたら傍にポチがいなくてびっくりしたんだ。  知らない間にリードを話しちゃったみたい。  心配したけど、すぐポチは見つかった。  くーん、くーんって鳴いてて、誰かが落としたもの(ハンカチかなにかみたいだった)を拾ってる最中だった。  勝手に離れちゃ駄目だろ。って普通なら叱る所なんだけど、落とし物を見つけちゃったんなら仕方ないよね。  僕はポチを誉めてあげようと思って、名前を呼びながら走ったんだけど……。  その途端遠くから猛スピードで車がやって来たんだ。  わ、ぶつかっちゃうって思ったらポチがこっちに飛び出してきて……。 「ポチ、駄目だよ、戻って!」  それで、こんな所に来ちゃったんだ。  一体どうしてだろう。  傍にいるポチを見下ろすが、ポチもよく分かってないのかクーンと不安げに鳴いている。  小さな頭をよしよししてあげてると、知らない間にお兄さんのお話は終わってしまったようだ。  あ、ちゃんと話を聞いてなかった。  人の話はちゃんと聞かなきゃ駄目だってお母さんに言われてたのに、良くないね。気を付けなくちゃ。 「……と言う事で、君はこれから別の世界に行くんだ。不幸な事故だったけど、どうかこれからは前向きに生きて欲しいなー」 「えっと、よく分からないけど、頑張るよ。それでお兄さんの名前なんて言うの?」 「今更それ聞く!? 俺の話聞いてた?」  ごめんなさい聞いてませんでした。 「まあいいや、どうせこの空間でのやりとりは忘れちゃうし」  え、そうなの?  やりとりっていうのは、確かえーっと会話した内容とか、行動した事って意味だよね。  ここで話した事とかやった事、忘れちゃうんだ。それは困っちゃう。  お兄さんとお話した事とか、ポチを撫でた事とか……。  あれ、でもそんなに困らないかなあ。 「まあ、そういうわけだから、プレゼントの確認もできたしこれから頑張ってね」  混乱していると、お兄さんが手を振ってさようならをし始めた。  するとだんだんと景色が白いもやもやに包まれていって……。  どうしてだろう。段々眠くなってきちゃった。
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